Ole Lukøje

· Myriad Leaves


Nakajima

ヒャルマアの夢

一 夢のおぢいさん

この世界中で、夢のおぢいさんぐらゐいろいろお話を知ってゐる人はありません。おぢいさんのお話は、ほんとに面白いのです。 夕方、子供たちが静かに卓子(テーブル)の前へ坐って、小さな椅子へ腰をかけてゐると、おぢいさんは、靴をぬいで、そうっとは梯子段(はしこだん)をのぼって、音もさせないやうに扉(と)をあけて入(はい)って来ます。そしていきなり子供たちの目の中へ、粉(こな)のやうなものをぶつけるのです。さうして置いて、おぢいさんは、そっと子供らのうしろへまはって、襟頸(えりくび)のところへ、軽い、軽い息をふきかけます。すると子供らの頭は、急に重くなって、肩の上へかしがって来ます。 けれどもおぢいさんはけして子供らをどうもするのではありません。ただ子供らを静かにしてゐさせるために、さうするばかりのです。そして子供らの一番静かになるのは、寝床へ入(はい)った時です。かうして子供らを静かにさせておいて、おぢいさんはお話を始めるのです。

子供らが眠ってしまふと、おぢいさんは寝床の上へ、そっと坐ります。おぢいさんの着物は、それはきれいな色をしてゐます。上衣(うはぎ)は絹で出来てゐますが、その色は何といっていいか分りません。それは光の工合(ぐあひ)で、緑(みどり)にも、赤にも、青にも見えるのです。 おぢいさんはリャウ方の手に一本づ、蝙蝠傘(かうもりがさ)を持ってゐます。 一本は、色々な繪をかいた傘で、それをひろげて、善(い)い子供の上へかぶせて置いて、一晩中面白い夢を見させるのです。 もう一本の方は、無地で、それを悪い子供の上へ擴げて置くと、その子供は、ぐっすりと眠って、朝まで夢もなにも見ないのです。 ある時、夢のおぢいさんは、一週間の間つづけて、ヒャルマアといふ子のところへ来て、毎晩一つづつお話をして聞かせました。一週間は七日ですから、おぢいさんのお話は、みんなで七つになります。おぢいさんが、ヒャルマアにして聞かせたお話を、これからみなさんにお話ししませう。

二 月曜日 ーー 數字の押合ひ

「さあ、よくお聞きなさい。」 と夢のおぢいさんは、ヒャルマアが寝床へ入ると、すぐに話し出しました。 「今わたしはお前の部屋をきれいに飾ってあげよう。」 かう言ったかと思ふと、花瓶に生かってゐた花が見る間に、大きな木になって、その枝が天井までのび、壁の方へもひろがって、室中(へやぢう)がまるで花でうづまったやうになりました。 「どの枝にも、どの枝にも、ごちゃごちゃと花が咲いて、一つ一つ花は、どれでも薔薇の花よりきれいなくらゐで、そして薔薇のやうないい匂ひが、ぷんぷんしてゐます。その上若し取って口へ入れることが出来たら、きっと砂糖潰(さたうづけ)よりも甘かったに違ひありません。 それから又花の間には、まるで黄金(きん)のやうにぴかぴかと光った果(み)がなてゐますし、乾葡萄(ほしぶだう)の一ぱい入ったお菓子も、方々(ほうほう)にぶら下(さが)ってゐました。ヒャルマヤはこんなきれいなものを、生(うま)れてからまだ見たことはありませんでした。 けれどもその時、ヒャルマヤの教科書の入れてある卓子(テーブル)の××

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